
本記事は2020年6月に作成されたインタビュー記事です。
お菓子工房 彩菓
まちなかにある公園のすぐ近く。ピンク色ののぼりとコインランドリーが目印の洋菓子店、お菓子工房彩菓。その外観は、一見するとお店というよりは住宅なので見失わないように注意が必要だ。
店主の黄川田仁さんは、もともと陸前高田市にあった洋菓子店で働いていたパティシエだった。震災後に、一度横浜の方で経験を積み、陸前高田に帰って来た。
彩菓のオススメは、震災前の洋菓子店の味を守ってきた豊富な種類の焼き菓子と、店主オリジナルのパン。
「うちのパンを食べたら、他のところでパンを食べられなくなりますよ」
自信たっぷりに笑う黄川田さん。果たして、その味は。

お菓子工房彩菓の店主・黄川田仁さんは、震災前に陸前高田市にあった「清風堂洋菓子店」で27年間も勤めていた熟練のパティシエだ。
当時のレシピを暗記していたという黄川田さん。震災後、避難所にいたころから、思い出したレシピを忘れないように書き起こすようにしていたそうだ。
2019年に現在の店舗をオープンしてからも、清風堂のころからの地元客が多く通って来てくれている。
「内陸から来る方も、清風堂に買いに来ていたので覚えてましたよという方が多くて。市役所に寄ったついでに来てくれるような方もいますね」
店主のオススメは焼き菓子とパン。特にパンは、店主が独学で覚えて作っているもので、小麦粉を探すのに5年ほどかかったそうだ。
県内はもちろん、山形・秋田・青森を歩いて探した。知人の紹介もあってついに辿り着いたのが、岩手県軽米町の晴山地区にある農家。同地区には、この1軒しか小麦を栽培していなかった。
また、通常の製粉機ではなく、熱を加わらないよう石臼で挽いているそうだ。農家の方がご高齢でたくさんつくることができないこともあって、このこだわりのパンは週2回ほどしか焼いていないうえに、数量も少ない。
しっとりもっちりした生地で、ニュージーランド産のバターの香りが鼻をくすぐる。焼かずに、サンドイッチのようにして食べるのがオススメだ。つくる曜日もまちまちなうえに、人気商品でまとめ買いされていく方もいるという。出会えたら幸運と思って、買うほかない。
もちろん、誕生日ケーキなどの予約も受け付けている。余裕をもって1週間ほど前までに予約しよう。

焼き菓子、パンともになかなかにボリュームがある。 コストパフォーマンスは間違いなく良い。