本記事は2019年8月に作成されたインタビュー記事です。
祖父から受け継がれる伝統の味
特徴的な甘みのめんつゆ。サクッと揚げられた香ばしい天ぷら。陸前高田のランチタイムで、最も混んでいると言っていいほどの人気のそば屋が、やぶ屋である。
雨の強い日でも人が並ぶほどの人気で、陸前高田でランチを食べるならどこ?という質問に対しては1番に上がってくるだろう。そば・うどんのほか、天丼やカツ丼など、丼ものメニューもオススメだ。こだわりの出汁を使ったそば屋の丼ものは、もはや説明いらずの美味しさである。半そば、半丼ものも用意されており、豊富なメニューを無理せず堪能することができる。ついつい欲張って、食べ過ぎてしまわないように注意が必要だ。
元々、奥州市で蕎麦屋を営んでいた祖父が陸前高田に移り住み、はじめたやぶ屋。内陸特有の濃いめの味付けを陸前高田市民の嗜好に合わせてアレンジして、1961年にスタートした。当初はそばだけでなく、仕出しや宴会、出前もしていたそうだ。
「とにかく忙しかったのは覚えています。家族全員で働いて働いて…今よりも営業時間も長くて、俺にはこれは真似できないなと思っていました」 子どもの頃の記憶を振り返りながら話すのは、3代目・及川雄一さんだ。当時、60席以上ある店内に加え出前もやっていた。忙しくて出前も遅くなることが多く、完全なキャパオーバーだったという。
東日本大震災が発生し、急きょ跡を継ぐ形となった及川さん。秘伝のつゆのレシピは残っていたものの、いざつくってみるとどこか味が違う。先代の味を蘇らせるために悪戦苦闘の日々が続き、再開前には胃潰瘍になってしまうほどの重圧と戦っていたという。
高田町にあった栃ヶ沢ベースで2012年3月に営業を再開したあと、お客さんからは好意的な意見が多く、とてもホッとしたそうだ。現在のお店を再建するにあたって、東京の蕎麦屋を参考にしながら新しい店舗のデザインから考えたという。仮設時代よりも車で来やすくなったため、高齢者の方や、公園が近くにある影響から子連れの方も増えた。仮設の頃より店舗面積は広くなったのだが、店員の数は変わらないので忙しいというのは嬉しい悲鳴だ。
毎日、たくさんの人が並ぶ陸前高田で人気の名店。昼の時間を少しずらして行くと、比較的スムーズに席につくことができるのでオススメだ。
そば屋は丼ものも安定の味。写真は上天丼(750円)