本記事は2019年8月に作成されたインタビュー記事です。
食欲をそそるほどよい辛味の坦々麺
陸前高田でオススメの飲食店は?と聞かれた時に、必ずあがってくるのがこの中華食堂熊谷だ。陸前高田というと海の街、海産物のイメージが強いなかでなぜ担々麺?と思う方もいるかもしれない。そこには、開発した店主の思いと、店の歴史が隠されているのだ。
白ごまと黒ごまの担々麺は、そのほどよい辛味と肉の香ばしさがマッチして食欲をそそる。箸が進んであっという間に無くなってしまうので、特に男性客の方は大盛りにしておけば良かったと思う人もいるだろう。熱心に通うファンの方も多く、ファンの方で賑わいを見せている。コアなファンには、自家製の杏仁豆腐も大人気の定番商品だ。
中華食堂熊谷は、1947年に祖母がはじめた店だ。もともとは駄菓子屋のような形態からスタートし、徐々に食堂に変化していったという。現在の店主・熊谷成樹さんは3代目にあたる。先代の父の頃に、完全に食堂になったそうだ。
東京で中華料理を勉強してきた熊谷さんは、1998年に一時休業を挟んで食堂の要素と中華料理を組み合わせ再開させた。当時はいわゆる中華料理店で、中華料理店とラーメン屋の間のような店だったそうだ。現在、人気を博している担々麺はこの頃に熊谷さんが開発したもので、発売当初はメニューの中でも1番下に掲載されていた。東京の中華料理店で働いていた頃、まかないで初めて食べた担々麺に感動した熊谷さんは、いつか地元に帰ったら提供したいと心に決めていたそうだ。
陸前高田に無かった担々麺というジャンルは徐々に市民に浸透していき、東日本大震災前は中華料理店よりも担々麺がメインのお店に傾倒していたという。
震災後、まだ飲食店が少なかった状況で仮設店舗を竹駒町に出店。人の集まる場所がなかなか無いなかで、地元の人たちの再会の場としても賑わった。生きていて良かったと涙を流して再会を喜びあう場面もあり、今振り返ってみるとたくさんの思い出ができた5年間だった。
「今のお店は、何かについでにくることができる立地。客層の違いは如実に感じます。ファミリー層が圧倒的に増えました。」
店内には小上がり席もあり、子ども用の椅子も完備している。家族連れでもゆっくり食事を楽しむことができるのが、新しい中華食堂熊谷の特徴だ。
看板商品の白ごま・黒ごま担々麺のほか、昔ながらのしょう油ラーメンとチャーシュー麺も人気だ。香ばしい香りとやみつきになる甘さが特徴のミニチャーシュー丼も、ラーメンとセットで食べるにはちょうど良いサイズ感である。デザートには、自家製杏仁豆腐も忘れてはいけない。公園で遊んだり、市内を観光してお腹が空いたら、中華食堂熊谷へ。