本記事は2020年6月に作成されたインタビュー記事です。
優しい甘さが特徴の老舗菓子店
休日になると大変な賑わいをみせる中心市街地の公園沿いにあり、時計台が特徴的な老舗・菅久菓子店。明治時代にまで遡るその歴史は深い。
菅久菓子店のオススメはいくつかあるのだが、甘食、マドレーヌ、ジェラートの3つは忘れてはいけない。 菅久菓子店が提供しているお菓子の特徴が、優しい甘さにある。甘さの苦手な方でも食べられるような、控えめな甘さなのだ。休日限定で販売しているジェラートは、熊谷珈琲店とコラボしたコーヒー味が人気だ。6種類のフレーバーがあり、どの味にするかつい悩んでしまいそうだ。
ショートケーキやロールケーキなど、カットされたケーキも販売している一方で、ホールケーキの受注も行なっている。陸前高田市民にとって、誕生日などのお祝いごと、クリスマス等には欠かせないお店が菅久菓子店なのだ。
菅久菓子店は、1896年に創業した老舗の菓子店だ。創業当初は製パン業を営んでおり「びっこパン」という名物商品があったそうだ。その後、菓子製造販売業に発展した。 震災前は駅前通りと大町の2箇所に店舗があり、パンを食べる喫茶店と、洋菓子の店と2つを経営していた。
現在、店主を務める菅野秀一郎さんは、2つの店を母と妻の3人で経営しとても忙しい日々を過ごしていたという。白衣で自転車に乗り、2つの店舗を行き来している菅野さんの姿を見かけたことのある方もいるのではないだろうか。
現在の菅久菓子店の名物といえば甘食。パサっとした食感の生地に、レーズンが入っており、ほどよい甘さで口当たりが良い。 「甘食がいつからあるか分からない。たぶん創業当初のころからあったはず。一方で、戦時中の食品の統制とかが時代的背景としてあったので、イースト菌とかを使わずに、日本にある食材、砂糖、粉、そして食用の植物性脂、重曹等を使い、本来イースト菌を使うところを日本にあるもので作ったんだと思います。それも同じ様に、パン釜で焼けたから、腹持ちもいいし、日持ちもいいし」
東日本大震災後には竹駒町にあった未来商店街にて仮設店舗として復活を遂げた。2018年に本設店舗をオープンした際には、休日限定でジェラートの販売も始めている。
伝統を守る甘食に加え、チョコレートやほうじ茶入りの甘食もある。同じく看板商品のマドレーヌや、チーズケーキも人気だ。お菓子の種類も豊富にあるのでショーケースの前で悩んでしまうかもしれないが、ひとつ欲張りたくなる、そんな菓子店である。
かつての菅久菓子店。モノクロ写真から、その歴史の深さが伺える。