本記事は2019年8月に作成されたインタビュー記事です。
モチモチの皮が特徴
名物・米まんじゅう
独特な外観の店舗に、ピンク色の少し派手な看板。小泉屋は、1948年に創業した菓子店だ。
看板商品の米まんじゅうは、地域の方からの要望でつくられた商品だ。独特な柔らかさの米粉を使った皮に、自家製のあんこを包む。もともと、陸前高田の家庭でもよくつくられていたまんじゅうをベースに開発した商品は、ごくシンプルなつくりのため日持ちしない。少し大きめのボリュームのあるまんじゅうは、市民にもファンが多い。ぜひご賞味いただきたい、陸前高田市の名物のひとつだ。
店主の熊谷薫さんは、小泉屋の2代目。仙台で修行をしてきた熊谷さんは、先代から後を継いで和菓子・洋菓子を扱う菓子店を営んできた。地域の方の嗜好の変化に合わせて、徐々に洋菓子の方に力を入れていたという。
かつての店舗は角に立ち、ピンク色の看板に白いひさしがある、見た目にも目立つ菓子店だった。 東日本大震災後、熊谷さんは流されてきた柱などの瓦礫を使って小屋をつくった。6畳程度の部屋だったが、電気がなくてもつくれる蒸し器などを使った商品を主力に、営業を再開したのだ。とくに大工仕事の経験があったわけではないが、しっかりしたものをつくり保健所の営業許可もクリアした。その後、少し落ち着いてきた頃に高田町大隅の仮設店舗に移設。冷蔵庫やオーブンなども用意し、商品も徐々に増やしていった。
当時、なるべく予算を抑えるために購入したオーブンを広島まで自ら受け取りに行ったのはよく覚えていると語る熊谷さん。 まちなかでの本設再建にあたり、市の景観条例に抵触しない範囲で目立つよう店舗の形も考えて再建した。
店舗の看板にも掲げられている米まんじゅうは、自他共に認める、言葉通りの看板商品である。40年以上前に頼まれてつくったのがきっかけで、米粉を練って自家製のあんこを包み、蒸し器で蒸したシンプルな商品だ。少し大きめで食べ応えのある米まんじゅうは、添加物を全く使用していないので日持ちしないのも特徴である。
「お菓子屋なのに日持ちしない商品を置くなんて、と言われることもありますよ」と話す熊谷さん。日持ちする焼き菓子をつくることも考えたが、焼き菓子はどこの菓子店にあるもの。いつでもどこでも買えるものではなく、小泉屋独自の商品を武器にしたいという考えだ。 お土産として持ち帰りたい人が、冷凍した米まんじゅうを50個注文し、船で運んだこともあったという。事前に電話をしていただければ、大量の注文も請け負えるとのことだ。
食べたことのない人は、一度は必ず昔ながらのこの味を食べてみてほしい。
小泉屋名物・米まんじゅう(130円)地元民にも根強い人気だ。